福祉文化とは何か (新・福祉文化シリーズ1)

福祉の現場では様々な文化活動が行われ生活に彩りを添える。また、文化における成果を福祉の中に組み入れ、地域を豊かにしていく取り組みも根付きはじめている。多彩で豊かな実践に学び、「創造的福祉文化社会」実現に向けた「福祉文化」の意義と役割を提示する。
著者 日本福祉文化学会編集委員会 編
発行:明石書店
ISBN 9784750331485
出版年月日 2010/03/01
本体価格 本体2,200円+税

今なお「福祉文化」という概念がよくわからないため、何を拠り所に学会活動を行ったら良いのかがわからないという声が多くの会員から聞こえてくる。これは、日本福祉文化学会が、「福祉文化活動の魅力」を会員各位へ伝え、会員として一緒に歩んでいってもらおうとするための「術」(研究・実践の融合とその方法)を持ち合わせていないからだと考えられる。そこで、今般、「新・福祉文化シリ-ズ」(全5巻)の編纂を通して、「福祉文化とは何か」を見出していくための作業に取り組み、「福祉文化」概念を確立することは困難でも「福祉文化活動」に対する会員各位の思いを通して、「福祉文化とは何か」を整理していこうと考えた。
日本福祉文化学会は、他の学会とは「何かが違う」と感じることのできるユニ-クな学会である。私たちはこの「何かが違う」という魅力に取りつかれて今日まで来た。
しかし、残念ながら、私たちは自信を持ってこの「違う何か」を語れる(言語化)できるまでには至っていない。そこで、シリ-ズ第1巻では、理事各位にじっくり「福祉文化活動の魅力」を語っていただき、他の学会とは「違う何か」を見出す努力をしていこうと考えた。時代の流れやニ-ズに適った新しい動きや体制づくりを模索していく努力やそのプロセスの中で、「福祉文化活動」に関する「魅力ある何か」を引き出し語っていただこうという趣向である。日本福祉文化学会の中心メンバ-が、どんな考え方に基づき、どんな魅力ある実践を行っているのかを、限られた字数を通してではあるが伝えていきたいと思う。会員を始めとする読者各位が本書を手にとって読み、考え、こんな魅力のある意義ある活動ならぜひ一緒に考えやってみたいと思っていただけたら幸いである。
「福祉文化活動の魅力」は、何と言っても、「福祉文化活動」そのものの「楽しさ」、「現場の力」を発見できる「面白さ」、「経験」を「共有」(「負の遺産」を通しても「正の遺産」を通しても)することによって得られる「心の遺産」ともなる。この「心の遺産」を具体的な「福祉文化の心」として会員相互に共有し、社会とも共有していく必要がある。そのための努力をしていく必要がある。
そのためには、「福祉文化とは何か」を倫理的に整理しておく必要がある。そのための「原則」や「価値」「枠組み」を提示しておく必要もある。その際基本となるのは、「すべての人が隔てなく、差別されることなく、多様性こそを認めあい、独自の価値観や生活様式に互いに誇りをもち、尊厳と自由の中で生きる権利を有し、意思決定への参加と、社会参加の成果を享受することができるようにすること。そのために、福祉の積極的な実りとしての文化を育み、さらに深い味わいのある文化を創り出していく」という「多元主義的福祉文化」観である。したがって、「福祉文化」概念とは、「多元的共生福祉文化社会」構築を目指す概念と言える。
日本福祉文化学会の中枢を担う人たちが語る「福祉文化活動の魅力」に心躍らせ、楽しみにしながら、本書の扉を開きたいと思う。

日本福祉文化学会 会長 河東田 博

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