福シネマ文化倶楽部#5 「同胞(はらから)」を観て思うこと 関矢秀幸 *ネタバレあり

映画「同胞(はらから)」を観て思うこと

(同胞との出会い)
私がこの映画と出会ったのは 1979 年大学 2 年生の時であった。住んでいた阿佐ヶ谷のアパートから、一人中野で映画をと出かけ、学生料金の名画座で初めて鑑賞した。本作は山田洋次監督が岩手県松尾村での実話を映画化したものである。最初は農村の若者たちのラブストーリー。誰が誰を好きで・・・とストーリーを追っていた記憶がある。当時の NHK“明るい農村”のようなドラマかと思っていた。

(主なあらすじ~河野さんやってくる)
~岩手県岩手郡松尾村は岩手山の北麓、八幡平の裾野に広がり、四つの集落からなっている。斉藤高志

(寺尾聡)
は青年団長で、酪農を営んでいる。兄の博志が盛岡の工場に通っているので高志が農事のすべてを切りまわしている。村の次男、三男のほとんどが都会へ出て行き、残った青年たちも東京・大阪方面へ出稼ぎに行って閑散している三月半ば、松尾村を一人の女性・河野秀子

(倍賞千恵子)
が訪れた。彼女は統一劇場の職員として、この村でミュージカル「ふるさと」の公演を青年団主催でやって欲しいと、すすめにきたのだ。秀子の話を聞いた高志は、公演の費用が 65 万円かかるため、青年団の幹部が揃う春になってから理事会をひらいて検討することを秀子に約束した。

(紛糾する青年団理事会)
5 月、桜が咲く遅い春。青年団の理事会がひらかれたが、公演費用に責任を持ちかねるという強硬な反対意見が出された。何度も理事会が行なわれ、意見の交換がくり返された。しかし、高志の「赤字になったら俺が牛を売って弁償する」との一言で、公演主催が決った。青年団のメンバーも、最初は変な話に思うのは当然。こんな田舎でミュージカル?全費用は 65 万円で、しかもこっち持ち。赤字になったらどうすんの。そんなに上手くいぐか?上手い話には裏がある。騙されてねぇか。お金だけ持って当日逃げられたり…?。そもそも、現実問題、お金がない、切符なんか買うやついねえべ。でもでも…。そんな事いつまでも言ってちゃ堂々巡り。やってみなきゃ分がんねぇ!。やらないで失敗するより、やって失敗した方がいい!。やる事に意義がある!。寺尾聰演じる村の若者の思い出話として語られている。あらすじは最後のオチまで予測できるけど、村の若者たちの悪戦苦闘やみなぎる活気が見ていて心地良く、自分も青年団の会員となったようで、映画にのめりこんでしまった記憶がある。若者たちの淡い恋模様や、ふるさとへの郷愁も織り込まれている。若かりし頃の倍賞千恵子、寺尾聰、市毛良枝らがひたむきに一生懸命な若い情熱を好演。山田監督と言ったら、渥美清、今回は村の消防団員役で出演している。

(映画はつながる~新潟現場セミに~)
平成 12 年から、新潟福祉文化を考える会は、県内各地の社会福祉協議会を訪問し、日本福祉文化学会との共催で現場セミナーを開催してきた。まさに劇中の統一劇場河野秀子(倍賞千恵子)が我々であり、斉藤高志(寺尾聡)青年団長が、地元の社会福祉協議会専門員であり事務局長であった。各地の社会福祉協議会が現場セミナーの会場と集客を担当し、我々が一番ケ瀬元会長、副会長等をつなげるという役割分担であった。地域福祉と福祉文化、身近な福祉を地域とともに考えたいお互い一つのこと成し遂げようとする気持ちが一つとなって、目標に向かっていく、そして会場が地元民で満員となると、心地よい達成感に湧き上がる自分の気持ちが体に染みついている。現在コロナ対応で、世の中気持ちが滅入るばかり、毎日辛い日々が続くけど、1 つの事に燃える!これに尽きる。

(映画鑑賞のススメ)
本作は、「家族」「故郷」に続く山田洋次監督の三部作に位置付けされている。山田監督らしい人情と古き良き日本の人間讃歌である。

関矢秀幸 (新潟福祉文化を考える会)(2021.4.13)

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