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福祉文化の現場セミナーin韓国

文責:藤岡純一

 日本福祉文化学会として、韓国の福祉施設を見学し、交流を行った。2025年9月4日から7日までの4日間で、7人が参加した。

訪問先は、①韓国勤労障害人振興会、②仁川市立障害人芸術団、③南楊州報勲療養院、④高陽市徳陽幸信総合福祉館、そして最後に、現地との連絡と案内、通訳をしてくださった趙文基教授のスンシルサイバー大学で、オンラインを含めて23名の学生参加のもと、振り返り会が行われた。

①さまざまな障がい者が働いている。中・軽度の人はもはや保護は必要なく健常者と一緒に働くことができる。その人の能力を生かせる仕事に就き、その特性に応じて共同作業が行われる。主な生産物は、コピー用紙、トイレットペーパーそして本の用紙で、防犯カメラの組み立ての補助もする。大量に生産され、百貨店や鉄道、大統領府にも納品される。フォークリフトを障がい者が運転する。スローガンは「ともに」である。特に興味深かったのは、作業の質を高めるためには「良くなるまで待つ」という姿勢が重要なことである。自分で考えて良くなるようにする、強制的にやるとむしろ能力が落ちる、社会性・知能・行動が良くなり、そして生産が良くなる。最後に指摘しておきたいことは、この会社は社団法人で、公的な支援を一切受けず営業が成り立っていることである。

②音楽を通じて障がい者の自立を目指す、全国の広域自治体として初めて設立された音楽分野の障がい者職業リハビリテーション施設である。そのスローガンは、THERE IS NO DISABILITY TO MUSIC(音楽に障害はない)である。オーディションを通じて選ばれた芸術家は、実際の舞台経験と専門的な音楽指導を受けて演奏力を強化する。レパートリーはクラシック、映画やドラマのサウンドトラック、ミュージカル、歌謡曲とポップスと幅が広い。障がい種別は自閉症、知的障害、精神障害とさまざまであるが、オーケストラの演奏を協働で行うことで、協調性や社会性が身につく。「うまくできなければできるまで待っている」という姿勢は、①と共通するものがある。公立なので市からの補助金と公演収入が主な財源となる。

③韓国報勲福祉医療公団理事で、韓流国際文化福祉学会会長(社会福祉学博士)のShin Hyun Seok氏の「医療・介護等の統合的ケア体制の発展のための介護サービス品質管理(QI)活動」について講演の後、同公団が運営している南楊州報勲療養院を視察した。この療養院は、退役軍人とその家族のために建てられたが、今は公務員やさまざまな高齢者も受け入れている。何よりも優先しているのは高齢者の「生活の質」で、身体的安定とともに精神的安定を重視している。そのために多職種の職員を採用している。日常生活支援サービスや看護サービスのほかに、理学療法や作業療法などのリハビリプログラム、家族支援やボランティア実習指導などの連携プログラム、また、職員への教育プログラムもある。注目すべきことを一つ挙げるとすれば、リハビリの中に心理安定治療室を設けて、精神的な安定を図っていることであろう。

④法人名は社会福祉法人僧伽院、高陽(コヤン)市から委託を受け、運営している社会福祉専門機関である。非常に規模の大きな建物で地下2階から5階まで延べ面積は4,633坪ある。地域住民のための社会福祉館、障がい者デイサービスセンター、そして市立幸福保育園がある。社会福祉館の利用は年間延べ100万人が訪れ、住民の「住居」「居場所」になっている。ミッションは「地域住民と共に築く幸せな福祉共同体」である。特にこの地域には低所得層密集地があり、そこに住民の1割が暮らしている。1階と地下1階に障がい者デイセンターがあるが、ここに発達障がい者15名、脳性麻痺障がい者14名が通っている。音楽、散歩、ダンス、バトミントン、そしてシャワーなどさまざまなプログラムが日程に組み込まれている。ここにも心理安定室が設けられている。障がい者と共に生きる地域社会福祉環境の実現を目指す。

今回は韓国の中でも先進的、特徴的な福祉施設を訪問した。そして韓国の人たちと交流することができた。日本からの参加者全員が、感激し喜びを感じた。今後、これを礎に交流をさらに継続・発展させることが望まれる。

 

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