「すばらしき世界」を観て
〜スティグマを押された男が周りに支えられてリスタートしていく軌跡〜
〜スティグマを押された男が周りに支えられてリスタートしていく軌跡〜
2 月 21 日、ユナイテッドシネマ新潟にて新潟福祉文化を考える会の渡邊豊氏に誘われて「すばらしき世界」を観てきた。
監督は⻄川美和さんで「ゆれる」や「ディア・ドクター」などがあり、面白くて考えさせられる作品を作るので私もファンの一人だった。
この作品は『身分帳』という小説をもとに作った作品だ。少年時の素行の悪さや殺人事件から刑務所生活13年を経て出所した三上(役所広司)が、身元引受人やケースワーカー、スーパーの店⻑等の関わりの中で、社会復帰を目指していく。
私がこの作品を見た時、真っ先に思ったことは「社会的スティグマ」だ。受刑者だったということで社会から負のイメージ(スティグマ)を押されてしまう。周りから、0からの先入観ではなく、マイナスからの先入観で人間関係を構築していくとしたら、どれほどの苦労が必要かと考えてしまう。
でも人は生きている限り生きねばならない。当たり前のように思うかもしれないけど、現在のコロナ禍という環境や社会的関係性を持たない人などが自殺してしまうこともある。生きるということが大変な世の中になっているように感じる。
一度失敗や挫折をしたらもう人生が終わるのではなくて、それでも生き続けなければならない。そしてどんなことがあっても何度でもリスタートできる、という希望が持てる世の中にしていくことが大切なのではないかと思う。スティグマを押された人でも、心を入れ替えてなんとか社会に適合していこうとする人もいる。
しかし真面目に働きたくても資格がない、ミシンを使っての武道具製作の技術を刑務所で習得しても武道具製作の需要がないため就職先がみつからない。そのため生活費がなくなり孤独を感じてしまい、また昔の繋がりのある仲間に身を寄せて元の世界に戻ってしまう。そんな負のスパイラルに陥りやすくなっているのかなと考えてしまう。その負のスパイラルをどこかで断ち切り、プラスのスパイラルにもっていく環境が必要だと感じた。
そこでこの映画に登場するのがフォーマルな関係として生活保護のケースワーカー、インフォーマルな関係としてスーパーの店⻑やマスコミの人であり、自分たちのできる範囲で一人の人間を支援している。
もちろん自分たちのできる範囲なので限度はあるけど、それでも支援はあるのだ。たとえスティグマを押されても、自分の気づかない所で、周りは自分のために動いてくれていることに私自身が気付かされた。人というのは社会から見られている。と同時に社会は見ていてくれてもいる。自分の考え以上のものを提案してくれる人もいるし、物資や金銭面で支援してくれる人もいる。それが実感できれば、人は成⻑できるし頑張れるのだと思う。
たとえスティグマを押されても、世の中すべてが悪く思う人達だらけではない。生きてさえいれば認めてもらえるチャンスがでてくる。考えが短絡的になったりして人間関係を断ち切らないことがとても大切だと思う。
人との接点があればまた新しい道も見えてくることだってある。
そこからまたリスタート、始めればいい。
人はやり直せる。
そんな「すばらしき世界」だった。
新潟福祉文化を考える会 社会福祉士・介護福祉士・准看護師 出羽 秀輝
(2021 年 3 月 11 日)
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